相続用語を解説します!相続でよく出てくる「法定相続人」や「遺留分」ってそもそも何?

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相続用語を解説します!相続でよく出てくる「法定相続人」や「遺留分」ってそもそも何?

相続分野では、一般人にはあまり聞き覚えのない言葉がたくさんあります。また聞き覚えのある言葉であっても、その内容を正確に理解している方はそう多くありません。

そこで、ここでは、相続に関するさまざまな用語を紹介し、その内容について簡潔に解説していきます。

■相続一般に関する基本的な用語

まず、相続に関するあらゆる場面で登場する基本的な用語について解説します。

●相続

「相続」とは、人の死亡を原因として財産上の地位を承継させることをいい、簡単に言えば、亡くなった方が有していたほぼすべての財産(一部を除く。民法896条ただし書き参照)を受け継ぐことをいいます。

相続は人の死亡によって開始し(民法882条)、亡くなった方の財産を、誰が、何を、どの範囲で受け継ぐのかが特に問題となります。

●相続財産(遺産)

「相続財産」とは、相続の対象となる財産のことをいい、「遺産」ともいいます。相続財産となるのは、一部を除くあらゆる財産です(民法896条本文)。土地や住居、預金、株式などのプラスの財産は当然のこと、借金やローン、未払金、保証債務などのマイナスの財産も相続財産に含まれます。

例外的に含まれないものとして、「一身専属権」があります(同条ただし書き)。これは特定の者だけが行使することを予定している権利であり、例えば、運転免許や扶養請求権、親権者の地位などは相続財産には含まれません。

●相続人

「相続人」とは、相続財産を受け継ぐ方のことをいいます。相続が開始していない段階で、相続が開始すれば相続人になると考えられている者を「推定相続人」といいます。

相続人になれる者の範囲は法律(民法)で定められており、このような法律上相続人になれる方を「法定相続人」といいます。
民法上、相続人となれるのは、配偶者と血族とされており、配偶者(内縁関係にある者を除く)は常に相続人となります(民法890条前段)。他方、血族(亡くなられた方と血縁関係にある者)には、①子どもなどの直系卑属、②両親などの直系尊属、③兄弟姉妹がありますが、これらの者には優先順位があり、①→②→③の順番で相続人となります(民法887条1項、889条1項)。例えば、①子どもがいる場合、②親や③兄弟姉妹は相続人になれません。

●代襲相続

相続人になるとされている方が相続開始前に亡くなっていたり、一定の事由(相続欠格・廃除。相続放棄は含まない)により相続権を失っていたりした場合に、その方に子どもがいるときは、その相続権を失った方に代わってその子どもが相続人となることがあります。これを「代襲相続」といい、代襲相続により相続権を得た方を「代襲相続人」といいます(民法887条2項、889条2項)。

代襲相続は、前述の①子どもなどの直系卑属又は③兄弟姉妹に子どもがいる場合(①の場合は、子どもに限らず、孫、ひ孫も含む。民法887条3項)に認められます。

●被相続人

「被相続人」とは、亡くなられた方のことをいい、この方が有していた財産が相続財産となります。

●相続分

「相続分」とは、相続財産のうち、その相続人が相続する割合のことをいい、例えば、遺言で「Aは3分の1、Bは3分の2」とされた場合、その遺言通りに遺産分割を行うならば、Aの相続分は3分の1、Bの相続分は3分の2となります(なお、このように遺言で指定した相続分のことを「指定相続分」といいます。民法902条1項参照)。

相続分は民法で一応定められており、法律上定められた相続分のことを「法定相続分」といいます。法定相続分は相続人の関係性によって異なり、例えば相続人が配偶者と子ども2人の場合だと、配偶者の法定相続分は2分の1、各子どもの法定相続分は4分の1ずつとなります(民法900条参照)。

指定相続分は法定相続分よりも優先するため、遺言で相続分の指定がある場合は、基本的にその指定された相続分で相続することになります。遺言書がない場合や、遺言書があっても相続分の指定がない場合は、法定相続分を目安に遺産分割協議を行い、具体的な相続分を決めます。

●遺贈

「遺贈」とは、遺言によって、特定の人に相続財産の全部または一部を譲り渡すことをいい、遺贈によって財産を贈る側を「遺贈者」、財産をもらう側を「受遺者」といいます。

遺贈の特徴としては、相続人以外の者に対しても財産を譲り渡すことができるという点です。介護をしてくれた息子の嫁や、お世話になった友人、良くしてくれた会社やボランティア団体にも財産を譲り渡すことができます。

■遺言に関する用語

ここでは遺言に関する用語を簡潔に見ていきましょう。

●遺言

「遺言」とは、自分の死後の法律関係に関する意思を表したもののことをいい、遺言を書面化にしたものを「遺言書」といいます。また、遺言を行う方を「遺言者」といいます。

遺言に一定事項を記載すれば法的効果が生じます(この一定事項を「遺言事項」といいます)。法的効果が生じるのは法律に定めがある事項に限られ、例えば、遺贈(民法964条)や、相続分の指定(民法902条)、認知(民法781条2項)などがあります。

遺言には、以下のように「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。そのほかとして、特別方式による遺言がありますが(民法976条以下)、これは極めて限られた状況下でのみ認められているものなので、ここでは説明を省きます。

●自筆証書遺言

「自筆証書遺言」とは、遺言者がその全文、日付及び氏名を自筆で書き、押印した遺言書のことです(民法968条1項)。平成30年相続法改正により、一部緩和された部分もありますが(同条2項参照)、基本的には自分で全部書かなければなりません。

法律で定められた形式で作成しなければならず、これに従わずに作成した場合、その遺言は無効となります。特に自筆証書遺言は、形式不備等によって無効となることが多々あるので、弁護士などの法律専門家と一緒に作成するとよいでしょう。

平成30年相続法改正によって、自筆証書遺言に関するさまざまな見直しが行われたので、以前よりもさらに利用しやすくなりました。

●公正証書遺言

「公正証書遺言」とは、遺言者が公証人の面前で遺言の趣旨を述べて、公証人が作成する遺言書です(民法969条)。基本的に遺言者が証人2人以上と一緒に公証役場へ赴き、記載しようと考えている内容を公証人に伝え、それを筆記したものを誤りがないかを確認したうえで作成します。

公正証書遺言は形式不備等による無効がほとんどなく、また家庭裁判所の検認手続きも必要ありません。しかし、作成手続きに手間がかかり、作成するごとに費用が発生する点に注意が必要です。

●秘密証書遺言

「秘密証書遺言」とは、公証人や証人の前に封印した遺言書を提出して、遺言の存在は明らかにしながらも内容を秘密にして遺言書を保管する方式の遺言書です(民法970条1項)。

秘密証書遺言は自筆でも代筆でもパソコンで作成したものでも構わず、遺言の内容を死後まで明らかにしないでおくことができます。しかし、無効となるおそれは公正証書遺言よりも大きく、作成費用がかかること、検認手続きが必要なことなどのデメリットがあるためか、現在はほとんど利用されていません。

■遺産分割に関する用語

遺産分割に関する用語を確認しましょう。

●遺産分割

「遺産分割」とは、共有状態になっている相続財産を各相続人が単独または複数人で所有できるように分割することをいい、特に、分割方法を決める話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。

遺言に従って遺産分割することを「指定分割」、遺産分割協議によって遺産分割することを「協議分割」といい、遺産分割の効果は相続の開始時にさかのぼります(909条本文)。このほか、遺産分割には調停による分割(家事事件手続法244条・別表第2の12)や、審判による分割(同法191条以下・別表第2の12)があります。

●相続放棄・限定承認・単純承認

相続できる権利を有していてもその権利を放棄して相続人にならないとすることもできます。これを「相続放棄」といい、相続放棄は「相続開始日または相続人になったことを知った日から3か月以内」(この期間を「熟慮期間」といいます)に所定の手続きで行わなければなりません(民法915条1項本文、938条)。

また相続財産にプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのかがわからず、相続すべきか放棄すべきか迷ってしまうことがあります。そこで、相続財産によって得た財産の限度内で被相続人の債務及び遺贈を弁済することもできます。これを「限定承認」といい、相続放棄と同様、熟慮期間内に行う必要があります(民法924条)。

熟慮期間内に上記の相続放棄や限定承認の手続きをしない場合は、基本的にプラス財産・マイナス財産をそのまま受け継ぐことになります。これを「単純承認」といいます。

●特別受益

被相続人から遺贈を受け、または婚姻・養子縁組もしくは生計の資本として財産の贈与を受けた相続人がいる場合、その相続人には「特別受益」があるといえ、この相続人を「特別受益者」といいます(民法903条1項)。

基本的に相続財産となるのは、相続開始時(=被相続人の死亡時)に被相続人が有していた財産です。しかし、特別受益者がいる場合は相続開始時以前に贈与された財産でも一定の範囲内にあるものは、その財産の価額を相続財産の価額に加えます。これを「特別受益の持ち戻し」といい、これによって相続人間の公平を図ります。

●寄与分

相続人の中で、被相続人の事業を手伝ったり、生活費を支援したり、病気・けが等で療養中の被相続人の看病又は介護をしたりして、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした場合、その相続人を「寄与者」といい、その貢献の度合いに応じて相続分がプラスされることを「寄与分」といいます(904条の2第1項)。寄与分も特別受益制度と同様、相続人間の公平を図るための制度です。

また平成30年相続法改正により、相続人以外の者でも、被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした被相続人の親族(例えば、長男の嫁など)は、その貢献に応じた額の金銭を求める権利が認められています(民法1050条1項)

■遺留分に関する用語

最後に遺留分に関して簡潔に解説していきます。

●遺留分

「遺留分」とは、兄弟姉妹を除く相続人に認められている最低限度相続できる割合のことをいいます。

例えば、「長男だけに全財産を相続させる」などの遺言があった場合に、被相続人の財産を頼りに生活していた配偶者や、相続により財産が得られると期待していたその他の子どもに、大きな不利益を生じさせることになります。そのため、兄弟姉妹以外の相続人に最低限の財産を相続できるようにしたのが遺留分制度です。

遺留分は法定相続分と同様、一定の割合が定められています(1042条)。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者の遺留分は4分の1、各子どもの遺留分は、8分の1ずつとなります。

●遺留分侵害額請求

遺留分を請求する権利のことを「遺留分侵害額請求」といいます。以前は「遺留分減殺請求」という名称が使われていましたが、平成30年相続法改正により名称が改められました。

また相続人が遺留分侵害額請求によって取り戻すことができるのは、財産そのものではなく侵害された額に相当する金銭となりました。

遺留分制度は平成30年相続法改正で大きな変更があった分野です。従来とは異なる取り扱いがなされている点が多々あるので、注意しましょう。

■まとめ

以上、相続関連で頻繁に登場する用語をご紹介しました。その内容一つ一つについては簡潔なものとなったので、詳しい内容を知りたい方は当ホームページをご参照していただくか、弁護士等の法律専門家にご相談ください。

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