相続税はどんな時にかかるの?相続税の課税から控除まで説明します。

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相続税はどんな時にかかるの?相続税の課税から控除まで説明します。

ここでは、相続税に関する基本的事項について解説していきます。

■相続税とは

相続税とは、人の死亡を原因として財産を受け継いだ者に課される税金のことで、相続はもちろんのこと、遺贈や死因贈与を受けた方も対象となります。生前贈与の場合は基本的に贈与税が課されますが、贈与税ではなく相続税が課されるケースもあります。

●相続税の対象となる財産

相続税の対象となる財産は、原則として被相続人から譲り受けたすべての財産です。預貯金や、土地・建物等の不動産はもちろんのこと、第三者に対する貸付金、著作権・特許などの経済的価値が認められる財産は、基本的に相続税が課されます。

また相続財産(遺産)そのものではないものの、死亡保険金のように、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産も「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。「みなし相続財産」の典型例としては次のものがあります。
・死亡保険金
生命保険契約などに基づき、被相続人の死亡によって支払われる保険金で、被相続人が保険料を負担していたもの
・死亡退職金
被相続人が在職中に死亡した場合に遺族が受け取る退職手当金や功労金で、死亡後3年以内に権利が確定したものに限る
・生命保険契約に関する権利
まだ保険事故が発生していない生命保険契約で、被相続人が保険料を負担し、被相続人以外の者が契約者であるもの(生命保険金は相続税の課税対象から外れた場合でも、所得税ないし贈与税のいずれかが課税される)
・定期金に関する権利
まだ給付事由が発生していない定期金給付契約で、被相続人が掛け金を負担し、被相続人以外の者が契約者であるもの

死亡保険金や死亡退職金と呼ばれるものであっても、ケースによってはみなし相続財産に含まれないものもあります。またみなし相続財産に含まれるといっても全額が課税対象となるわけではないので、注意が必要です。

さらに、前述のように生前贈与の対象となった財産でも、次のいずれかに該当する場合は、相続税が課されることになります。
・相続時精算課税による贈与財産
・相続開始前から3年以内に相続人・受遺者に贈与された財産
後者は特に相続税逃れを防止するために設けられた制度で、相続税の課税対象から免れるために死期が迫ってから行われた贈与も相続税に含まれるとしています。

以上をまとめると、相続税の対象となる財産は、
①相続や遺贈、死因贈与によって取得した財産
②みなし相続財産
③生前贈与された財産のうち、一定の条件を満たすもの
となります。他方で、金銭的な価値があっても、相続税がかからない財産(非課税財産)もあり、例えば、墓地や仏壇、一定の要件に該当する公共事業用財産、国や特定の公益法人に寄付した場合の寄附財産などには、相続税は課税されません。

●相続財産の評価

相続税は、各人が自分で計算して申告・納付しなければなりません。そのため、相続税の課税対象となる財産の価額を正確に評価することがまずもって必要となります。

現金や預貯金であれば残高がそのまま評価額になりますが、相続財産の評価で問題となるのは、不動産や株式、骨董品など、価額が変動するものです。相続税の財産評価は、基本的に相続開始時の「時価」で行いますが(相続税法22条)、そう簡単に時価が分かるわけではなく、また財産によっては価額に幅があるものもあります。そこで、相続税の計算上、財産の価額は原則として相続税法や国税庁が定めている「財産評価基本通達」に基づいて評価することになります。

上記通達の具体的な内容については別の機会で解説しますが、一例として宅地(住宅用の土地や、店舗、工場などの事業用建物のための土地など)の評価方法をご紹介すると、宅地の評価方法は、(1)路線価方式と、(2)倍率方式があります。
(1)は国税庁が道路ごとに定めている路線価をもとに評価する方法で、「〈1㎡あたりの路線価〉✕〈土地の面積(㎡)〉=〈評価額〉」という計算式で求められます。(2)は各市区町村(東京23区は東京都)が定める固定資産税評価額をもとに評価する方法で、「〈固定資産税評価額〉✕〈倍率〉=〈評価額〉」という計算式で求められます。

財産によっては複雑な計算や専門性が高いものもあり、税理士などの専門家に依頼した方がよい場合もあります。しかし、一般的な土地建物や上場株式などであれば自分で評価額を計算することもできるので、別稿で解説する相続財産の評価方法をご参照ください。

■相続税の基礎控除など

ここまで相続税が課税されることを前提に解説してきましたが、相続や遺贈等を受けたすべての方が相続税を申告・納付しなければならない、という訳ではありません。むしろほとんどの方は、相続税を納付する必要はありません。

なぜなら、相続税には「基礎控除額」というものが設定されており、相続財産の価額がこの基礎控除額を超える場合にのみ、相続税の申告・納付が必要となるからです。また例えば配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの特例や税額控除があるので、基礎控除額を超えても相続税を納付する必要がない場合もあります(ただし、特例や税額控除を利用する場合は申告が必要)。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円✕〈法定相続人の数〉」という計算式で求められます。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合(計3人)であれば、基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+600万円✕3)となり、相続財産の価額が4,800万円以下であれば相続税を申告・納付する必要はありません。

ここで注意すべきなのが「法定相続人の数」です。基礎控除額の計算に必要となる「法定相続人の数」と、実際に相続する人の数が一致しないこともあります。
例えば、法定相続人で、かつ、相続放棄をした方は相続により財産を承継することはありませんが、基礎控除額の計算で必要となる「法定相続人の数」にこの相続放棄をした者を数に加えます。また「法定相続人の数」に含める養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までを「法定相続人の数」に含めることができます。

■相続税の計算方法

前述の通り、相続税は、各相続人が自分で計算して納付税額を算出しなければなりません。計算方法の具体的な内容については、これも別の機会に譲りますが、全体の流れとしては以下の通りです。

まず相続税は各相続人(又は受遺者、受贈者)がそれぞれ自分の課税価格を求めることから始めます。その前提として、相続や遺贈などで取得した財産のすべてを正確に評価することが必要となります。

相続税の課税対象となる財産は、前述した①~③の財産です。これらの財産の合計額に、墓地や仏壇などの非課税財産や、債務(借入金やローンなど)及び葬儀費用(仮葬・本葬・通夜費用など)を差し引いたものが各人の課税価格(なお、1,000円未満は切り捨てる)となります。

次に各人の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を引きます。基礎控除額を差し引いた価額が実際に相続税が課税される遺産総額(課税遺産総額)となります。

そして法定相続人が法定相続分通りに財産を取得したと仮定して各人の取得金額を計算し、それに税率をかけたものを合計して、相続税の総額を求めます。

最後に、相続税の総額を実際に財産を取得した割合に応じて案分し、各人の相続税額を求め、各種の加算又は控除によってプラスマイナスをしたものが、各人の納付税額となります。

■相続税の納付

相続税は相続開始日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に、現金で一括納付するのが原則です。延納や物納ができる場合もありますが、これらを行う条件はかなり厳しいので、相続対策として納税資金を確保しておくことが大切です。

以上、相続税に関する基本的な事項について解説しました。税金に関することなので、複雑な内容が多々ありますが、別の記事に詳しい内容を紹介したものがあるので、適宜参照するようにしましょう。またお困りの際は、弁護士や税理士などの法律専門家に相談するようにしましょう。

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