被相続人の相続財産に「借金」や「連帯保証人」などの「負の相続財産」がある場合の相続はどのような形で行われるのでしょうか。
■原則は「負の相続財産」である「連帯保証人」も相続することになる
通常、相続をする際には被相続人の財産も負債もすべて相続をすることになります。そのため、負の財産である「連帯保証人」の立場も負債として相続を行うことになります。そのため原則は「連帯保証人」としての立場も、法定相続人で綺麗に分けるという形になるのです。「連帯保証人」の立場を相続することになると、仮に借金の返済が出来なくなった場合に、連帯保証人として借金の返済を代わりに行うことになります。知らなかったからという理由では返済を逃れることはできません。連帯保証人の立場の相続割合は、法定相続分に比例することになります。そのため、法定相続人が配偶者とお子様2人の場合には、配偶者が2分の1、残りのお子様が2分の1を分け合って4分の1の負担になります。特定の相続人に連帯保証人としての立場をすべて移譲することも可能ではありますが、あくまで相続人間でのやり取りでしかないため、この場合でも債権者は法定相続分での返済請求が可能になります。
■連帯保証人としての相続は相続税の控除対象外となる
通常は負債を負っていると相続財産から差し引いて相続税の課税対象から控除されることになります。しかし、連帯保証人としての立場はいくら借金を抱えていようが、相続財産から控除して、相続税の課税を抑えるということはできません。これは、借金は負債ではあるが、将来的に必ず返すべきものと考えられているからであり、あくまで相続税の課税を考える際には負債として換算することができないということからそのような制度になっています。そのため、事前に連帯保証人としての立場に被相続人があることが分かっている場合には、そのことも考慮して相続税の納税対策を行う必要があります。
■どうしても連帯保証人を相続したくない場合には、「相続放棄」、「限定承認」を検討する
原則として、「連帯保証人」の立場は相続することになるということでしたが、どうしても相続をしたくない場合には「相続放棄」「限定承認」を検討することをおすすめいたします。
●「相続放棄」
相続放棄とは、被相続人の資産も負債もすべて「相続をしない」、遺産分割協議にも参加をせず全く相続には関与しないという意思表示を行うことです。相続放棄を行うためには、相続が発生したことを知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所に出向いて申告を行う必要があります。この手続きを行うことによって、資産も負債もすべて相続しないということになりますが、相続放棄を行ってしまうと、相続放棄を行った人の連帯保証人としての立場が他の相続人に移ってしまうため、相続人一人一人の負う連帯保証人としての立場の額が大きくなることになります。そのため、相続放棄を行う際には、事前に他の相続人に「相続放棄」をする旨を伝えておくことがトラブルを防ぐポイントとなります。
●「限定承認」
限定承認とは、相続人が相続した資産の範囲内での負債を相続するという相続の方法です。この相続方法を用いることによって、資産以上の負債を相続することがなくなるため、必然的に相続人が負債超過になることはありません。そのため、ほかの相続人に迷惑をあまりかけられないが、負債を絶対に負いたくないという場合には、検討できる相続方法になります。しかし、この相続方法も法定相続分すべての負債を負うことにはならないため、他の相続人の負債が多くなってしまうことが考えられます。そのため、限定承認を行う際には、事前に他の相続人に「限定承認」をする旨を伝えておくことがトラブルを防ぐポイントとなります。限定承認の申告方法も相続放棄と同じく、相続が発生したことを知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所に出向いて申告を行う必要があります。
■相続時に連帯保証人を相続すると知らなかった。相続放棄期間は過ぎているけど、相続放棄したい。どのように対処をすればいい?
原則として、連帯保証人としての立場は法定相続人で相続を行うことになりますが、仮に相続時に連帯保証人に被相続人になっていることを知らなかった場合には、どうすればいいのでしょうか。仮に被相続人が連帯保証人になっていることを知らなかった場合には、連帯保証人であることを知った日から家庭裁判所に申告を行って、相続放棄が出来る可能性があります。そのため、被相続人が連帯保証人としての立場であったことを知った場合には、速やかに対処をしましょう。
■どうしても連帯保証人としての役割を果たせない。相続放棄も出来ない。どうすればいい?
どうしても連帯保証人としての立場は原則として相続を行うことになります。しかし、相続をした後に相続人が借金の返済不能に陥ってしまった場合には、どうすればよいのでしょうか。
●金融機関との交渉を行う
どうしても支払いができない場合には、金融機関との交渉を行うことで、借金の減額交渉を行うことをまずはお勧めいたします。金融機関に事情を説明することで、場合によっては利息の軽減などの減額措置を取ってくれる場合もあります。
●自己破産、任意整理を検討する
金融機関が減額交渉にも応じてくれない場合には、自己破産や任意整理を行うことによって、負債を軽減する方法もあります。どうしても借金を返済できない場合などには、この2つの方法も検討する必要があります。
連帯保証人としての立場は簡単に逃れることができないものになっていますが、上手に制度を活用することによって、借金の軽減等にもつながります。まずは一人で悩まずに専門家にお問い合わせください。