相続放棄・限定承認・単純承認ってなに?

Share on facebook
Facebook
Share on twitter
Twitter
Share on linkedin
LinkedIn

相続放棄・限定承認・単純承認ってなに?

人が亡くなると、相続が始まります(民法882条)。このとき、亡くなられた方を「被相続人」といい、被相続人から財産を相続する方を「相続人」といいます。

相続が開始すると、被相続人の財産は、そのまま放置すると「誰のものでもない状態」になってしまいますので、「一応」相続人たちのものになります。ただ、これは「一応」の効果となっています。そして、相続人となることのできる人たちは、その相続財産を受け取るのかどうか(相続人となるのかどうか)を選べるような仕組みが用意されています。

これは、具体的にどのような内容なのでしょうか。

相続人たちに用意されている選択肢は3つあります。1つ目は相続放棄をすること、2つ目は相続を承認すること(単純承認)、3つ目は一定の限度で承認すること(限定承認)です。

では、1つずつ見ていきましょう。

■相続にあたって、相続人に与えられている選択肢

●相続放棄

相続放棄とは、文字通り相続を放棄することですが、その法的な効果をわかりやすく説明すると「初めから相続人とならなかった」とみなされる(939条)というものです。「一応」相続人たちのものとなっていた相続財産は、後に遺産分割協議等によって相続人全員で分割していくことになりますが、相続放棄をした人は「初めから相続人とはならなかった」ということになるので、この分割手続きには全く関与しないということになります。すると、当然遺産を受け取ることもできなくなります。

●単純承認

単純承認とは、相続財産を何の制限もせずに受け取るという選択をすることをいいます(920条)。わかりやすく言い換えると、放棄等をせずに普通に相続人となって遺産を受け取るということです。
詳しくは後で述べますが、一定の期間の間に上記の3つの選択肢のいずれも選択せずに放置していると、自動的に単純承認をしたことになります(921条2号)。また、相続財産の全部又は一部を処分した場合にも、自動的に承認したことになります(同条1号)。また、相続放棄や後述する限定承認をした後で、相続財産を隠したり私的に消費したり、意図的に相続財産の目録に記載しなかったりした場合にも同様です(同条3号)。このような、一定の条件を満たすと単純承認したことになるという法的仕組みを「法定単純承認」といいます。

●限定承認

限定承認は、相続によって得た財産の額を上限として、その範囲内で被相続人が負っていた債務等を支払う、ということを条件にする相続の承認です。
例えば、被相続人が1200万円の借金を負っており、1000万円の遺産があった場合に、限定承認をすると、相続によって得た財産1000万円で同額の分の借金を返して、残った200万円の借金を相続人が引き継ぐことはなくなるということになります。

なお、これらのうちどの選択肢を選ぶか考える期間のことを「熟慮期間」といい、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」(915条1項)に決めなければならないこととされています。この期間のうちに相続財産を調査して(同条2項)どの選択肢にするか決めるということです。

ここまで、相続にあたって、相続人にはどのような選択肢があるのかを見てきました。では次に、それぞれの選択肢をどのような手続きで実現していくのかを見ていきましょう。

■それぞれの選択肢の手続き

●相続放棄

民法には、「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」という規定があります(938条)。では、「家庭裁判所」とはどの家庭裁判所を指すのでしょうか。また、「申述」に必要な書類にはどのようなものがあるのでしょうか。

まず、「家庭裁判所」は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を指します。どの家庭裁判所がどの地域を管轄しているのかは、裁判所ホームページで調べることができます。

次に、「申述」をするにあたっては、いくつかの書類が必要になります。
具体的には、
・相続放棄の申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
・その他、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等(申述人が誰かによって変わる)
等があります。

必要な費用は、
・申述人1人につき収入印紙代800円
・郵便切手分の代金
となります。

●単純承認

単純承認については、既に述べたように、「法定単純承認」という仕組みになっており、相続放棄や限定承認をしないまま放置すると自動的に単純承認をしたことになります。
したがって、何か手続きをしなければ単純承認できないということにはなりません。

●限定承認

民法には、「相続人は、限定承認をしようとするときは」「相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません」という規定があります(924条)。また、限定承認は、相続人全員でしなければならないので注意が必要です(923条)。

まず、「家庭裁判所」は、相続放棄と同様に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を指します。どの家庭裁判所がどの地域を管轄しているのかは、裁判所ホームページで調べることができます。

次に、必要な書類は、
・限定承認申述書
・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人(相続人)全員の戸籍謄本
・その他の書類(申述人が誰かによって変わる)
があります。

費用についても、相続放棄と同様ですが、
・申述人1人につき収入印紙代800円
・郵便切手分の代金
となります。

相続・事業承継コラム