【相続法逐条解説④】民法941条~民法950条  財産分離編

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【相続法逐条解説④】民法941条~民法950条  財産分離編

【第5章 財産分離】

財産分離…被相続財産と相続人の固有財産の混合を避けるため、相続開始後に相続債権者もしくは受遺者、又は相続人の債権者の請求によって、相続財産を分離して管理・清算する手続きをいう。

①第一種財産分離:相続債権者又は受遺者の請求の場合(941条〜948条)を指し、固有財産が債務超過である場合に意味がある。

②第二種財産分離:相続人の債権者による請求の場合(950条)を指し、相続財産が債務超過にある場合に意味がある。

※①②は相続財産の清算がされ、その手続きは限定承認と類似するが、相続人保護制度である限定承認と異なり債権者保護を趣旨としている制度である点が異なる。

①第一種財産分離規定

941条(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)

1項 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から3箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産(もともと相続人が有している財産)と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
2項 家庭裁判所が1項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、5日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったことや一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
3項 2項の規定による公告は、官報に掲載してする。

942条(財産分離の効力)

財産分離の請求をした者及び前条第2項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。

943条(財産分離の請求後の相続財産の管理)

1項 財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
2項 第27条から第29条(不在者の財産管理人の職務・権限・担保提供及び報酬)までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

944条(財産分離の請求後の相続人による管理)

1項 相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があったときは、以後、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければならない。ただし、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任したときは、この限りでない。
2項 第645条から第647条まで(受任者による報告・受け取り物の引き渡し等・金銭消費の責任)並びに第650条第1項及び第2項(受任者による費用の償還請求・代弁済請求)の規定は、前項の場合について準用する。

945条(不動産についての財産分離の対抗要件)

財産分離は不動産についてはその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

946条(物上代位の規定の準用)

304条(物上代位)の規定は、財産分離の場合について準用する。

947条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)

1項 相続人は、第941条第1項及び第2項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2項 財産分離の請求があったときは、相続人は、第941条第2項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
3項 第930条から第934条まで(限定承認による弁済等)の規定は、前項の場合について準用する。

948条(相続人の固有財産からの弁済)

財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行使することができる。この場合、相続人の債権者は、その者に先立って弁済を受けることができる。

949条(財産分離の請求の防止等)

相続人は固有財産で相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を提供して、財産分離の請求を防止させ又はその効力を消滅させることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けることを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。

②第二種財産分離規定

950条(相続人の債権者の請求による財産分離)

1項 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
2項 第304条(物上代位)、第925条(限定承認したときの権利義務)、第927条から第934条まで(限定承認による弁済・責任等)、第943条から第945条まで(財産分離の請求後の相続財産の管理等)及び第948条(相続人の固有財産からの弁済)の規定は、前項の場合について準用する。ただし、第927条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない。

相続・事業承継コラム