相続には期限がある?相続に関する期限を徹底解説!

Share on facebook
Facebook
Share on twitter
Twitter
Share on linkedin
LinkedIn

相続には期限がある?相続に関する期限を徹底解説!

相続は被相続人の死亡によって発生します。人の死は突然おとずれることが多いため、多くの人が突然、相続人という地位に立たされることになってしまうことも少なくありません。それにもかかわらず、現在の法律では相続に関する制度について期限が設けられていることが多くあります。この期限を超えてしまうと、相続を放棄することができなくなってしまうことや、本来自身ができたはずの請求ができなくなってしまうことになりかねません。そのため、基本的な相続の知識としてどの制度に期間が設けられているのかということを知っておくことが必要です。

相続放棄という制度についての期間

まず一つ目は相続放棄という制度について期間が設けられています。相続放棄とは、相続人が自分に生じている不確定な相続状況の効果を確定的に消滅させることを目的とする意思表示を言います。相続放棄は民法938条で定められています。相続放棄をすべき効果的な場合は被相続人が債務超過などに陥っており、相続人が被相続人を相続してしまうと負担が過大であるという場合などが考えられます。

相続放棄をした場合の効果は民法の939条に規定されており、「初めから相続人とならなかったものとみな」されます。すなわち、相続の効果、具体的には相続人の権利や義務、財産の承継等の効果を全く生じさせないという効果が発生するということです。相続放棄をする場合には相続が開始したことを知った時点から原則として3ヶ月以内にしなければなりません(民法915条1項に規定されています)。相続を開始したことを知った時点の判断は、被相続人が死亡したことを知ったことに加えて自身が相続人となったことを知った時点を起算点とすることが現在の一般的な運用です。相続が発生した時からではないことに注意が必要です。

なお、裁判所に期限の延長を申し立てることもできるので例外的には期限を延長することも可能ですが、裁判所に対する申し立てが必要となることに注意が必要です。相続人が被相続人の死亡を知り、自身が相続人であることを知った上で3ヶ月が経過してしまった場合には相続放棄はできなくなってしまいます。被相続人の義務等が過大であってもこれを免れることができなくなってしまう恐れもありますので、この点は十分注意が必要です。

遺留分侵害請求の期間制限

二つ目は遺留分侵害請求の期間制限があります。まず、遺留分侵害請求とは遺言等により本来であれば相続人となることができたにもかかわらず、相続人となることができなかった者に最低限の相続分を保証するというものです。遺留分侵害請求は本来相続人となれるはずの者が相続人に慣れなかった場合に、その者の相続人となれるだろうという期待を保護する制度として民法1046条に規定されています。
遺留分侵害請求ができる相続人は被相続人の兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子供、直系尊属)に限られ、胎児でも生きて出生すれば民法886条により請求することができますし、相続人が相続人として欠格・廃除されてしまったような場合には相続人のさらに直系卑属も相続人の遺留分の範囲で遺留分侵害請求ができます。遺留分侵害請求額は相続人ごとに算定されるものであり、民法1042条によって算定方法が規定されています。もっとも算定方法については複雑な側面がありますので、自己がどれくらいの遺留分を請求できるかについては弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

遺留分侵害請求を請求できる期限は遺留分の侵害があったことを知った時点から1年間行使しないときや相続開始から10年が経過した時点までと民法1048条に規定されています。この期間を過ぎてしまうと、自己の遺留分を主張することができなくなってしまうため、十分な注意が必要です。遺留分の侵害があったことを知った時という基準は、単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求をできると知った時を判断の基準とすることが一般的です。

所得税の準確定申告期間の期限

三つ目は所得税の準確定申告です。通常、確定申告は毎年1月1日から12月31日の事業年度の所得を計算し、翌年の2月から3月の一定期間内に申告・納税することが必要とされています。しかし、その事業年度内に納税者が死亡してしまった場合には相続が開始したことを知った日から4ヵ月以内に申告・納税をしなければなりません。これを準確定申告の制度と言います。この場合、相続人が申告・納税手続きを取らなければならず、相続人が複数いる場合は全員で行うことが原則とされています。
また、準確定申告をする場合、「配偶者控除」や「扶養控除」といった一定の控除が認められる場合もあるため、これらの控除に該当するか否かについても確認しておく必要があります。相続人が複数人いる場合には法定相続分の割合に応じて納税することになります。
準確定申告を怠ってしまった場合、延滞税や加算税が課されるなどのペナルティが課されることもありますので期限の徒過には注意が必要です。

相続税の申告・納付手続きの期限

四つ目は相続税の申告・納付手続きです。相続税の申告・納付手続きは相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内とされています。申告も納付も両方とも同じ期限であることに注意が必要です。申告期限が土日祝日である場合は申告期限は翌日以降の平日が期限となります。
相続税の申告・納付手続き期限を過ぎてしまった場合は相続税について一定の控除を受けることができると言う特例を受けることができなくなってしまうことがあります。また、無申告加算税、重加算税、延滞税という三つの課税がさらにされてしまいます。特に重加算税は税率が40%ととても高いです。このような期限徒過のペナルティには十分に気をつけましょう。

死亡届の提出期限

五つ目は死亡届の提出です。死亡届は死亡を知った時から7日以内に届出をしなければなりません。また、海外で死亡した場合はその事実を知った時から3ヵ月以内に死亡届を提出しなければなりません。死亡届は亡くなった故人と何らかの関係が有れば届出をすることができることになっており、届出人は親族に限られません。また、死亡届は死亡した場所、故人の本籍地、届出人の所在地のいずれかの場所で提出することが必要です。
死亡届を正当な理由もなく出し忘れてしまった場合は戸籍法に基づき、5万円以下の罰金が科されますので注意することが必要です。

このように、相続に伴ってしなければならない手続きは複数存在します。それぞれの期限も異なり、期限を徒過すると、自己の権利の主張ができなくなってしまったり、ペナルティーが科されてしまうこともあります。これらの期限は必ず守るように心がけましょう。また、期限が定められていない手続き(遺産分割協議手続きや金融機関からの払い戻しなど)についても相続後に早めに行うことで相続に伴う紛争を予防することができることもあります。相続に関係する手続きは期限に限らず、なるべく早めに手続きを終了させてしまうことをおすすめします。
相続に関係する手続きに悩んでしまった場合には相続を専門とする弁護士や相続税に強い税理士等に相談されることおすすめします。

相続・事業承継コラム