相続税の節税方法。どのような方法がある?

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相続税の節税方法。どのような方法がある?

相続税の負担を少なくするために、生前からできることは何かないかお考えの方は多いと思います。相続税は、相続財産に対して課されるもので、その課税の仕組みは所得税と同じ累進課税制度をとっています。つまり、死亡した時点での財産が多ければ多いほど、税率も高くなってしまいます。相続税の課税対象となる方、中でも特に、相続財産が多くなりそうな方は、相続税対策をしっかり考えて行うことがおすすめです。

■相続税の仕組み

そもそも相続税はどのような場合に課されるのでしょうか。基本的な相続税の計算方法をまず初めご紹介いたします。
基礎控除額というのを聞いたことがあるでしょうか。相続税には、基礎控除という制度があり、遺産額のうち基礎控除額までは相続税の課税対象になりませんという財産の額です。
基礎控除額の計算方法は3000万円+ 600万円×法定相続人の数で求められます。
例えば法定相続人が計3人であれば、3000万円+600万円×3人=4800万円が基礎控除額になります。相続の対象となる財産の価額が、基礎控除額を下回っていれば、相続税の節税を考える必要はあまりないことになります。まずは、ご自身の相続人の数を確認し、基礎控除額がいくらかを計算してみてください。

基礎控除額を上回りそうだという場合、どのくらいが課税遺産総額になるのかの計算も必要です。まず、遺産額というのは、すべての遺産総額から、債務や、葬式の費用、非課税財産の金額を引いたもので計算します。また、生前贈与であっても、相続開始前(死亡前)3年間以内に贈与した財産は、相続税の課税対象になります。
例えば、相続財産が1億円あるとして、葬儀費用に200万円、債務3000万円、非課税財産800万円、1年前に孫への生前贈与3000万円という状況であれば、
1億円-200万円-3000万円-800万円+3000万円=9000万円が正味の遺産額となります。この場合で、基礎控除額が4800万円であるとすれば、9000万円-4800万円=4200万円が課税遺産総額ということになります。
この課税遺産総額をどれくらい減らせるか生前に工夫をすることが、相続税の節税ということなのです。

■相続税の節税方法

以上でご説明した相続税の課税の仕組みを前提に、ここでは、相続税を節税する方法をいくつかご紹介します。

●生命保険/死亡保険への加入

はじめに考えられる方法は、生命保険への加入です。生命保険金や死亡保険金は、「みなし相続財産」として課税対象となりますが、500万円×法定相続人の数までは非課税枠となります。これは、生命保険をかけることは遺族の生活を守るためなのに、税金がかかってしまってはその意味がなくなるという考えから、非課税枠が設けられているのです。例えば、法定相続人が3人いれば、1500万円が非課税となりますから、1500万円の生命保険をかけていればその分お得だということになります。

●生前贈与

次に考えられるのは孫や子に生前贈与をすることです。生前贈与(暦年贈与)は、年に110万円以下までなら非課税ですから、10年連続で生前贈与をすれば、1100万円の財産を手放すことができます。こうすれば、ご自身の課税遺産総額が減りますので、結果的に節税になるということです。さらに、孫が5人いて、1人に100万円ずつ、計毎年500万円を贈与しても、孫がその贈与しか受けていなければ非課税になりますから、10年間で計5000万円を贈与することができるという点で、贈与する側にとってのメリットはとても多いといえます。
ただしこれには注意が必要です。贈与税は、もらった人が支払うものであり、複数の人から贈与を受けていた場合その総額で計算されます。例えば孫が、父方の祖父から100万円、母方の祖父から50万円をもらっていた場合、合計150万円となり、110万円との差額の40万円に課税されてしまいます。
また、定期贈与とみなされてしまうと課税対象となります。定期贈与とは、1000万円を10年間に分けて贈与する、というような場合で、はじめから1000万円贈与するつもりであったとして1000万円が課税対象になります。こうなってしまわないように、贈与契約書を専門家のアドバイスのもと丁寧に作成することが重要です。

なお、暦年贈与であっても、死亡する前の3年間の、推定相続人に対する贈与は、生前贈与加算といって課税対象になります。将来、相続人になる予定のない人への贈与であれば、この加算はされませんから、孫やおい・めい等への相続がおすすめです。
また、教育資金贈与信託などの制度の利用もおすすめです。これは子供や孫への教育資金を信託銀行に預けることで1500万円まで非課税で贈与できるという制度です。この他にも、結婚資金などの制度もあります。

●不動産投資

また不動産投資の方法が考えられます。簡単にいうと、自分の財産を使って不動産に変え、不動産に関する税金の特例などを使うことで課税遺産総額を減らそうということです。
これには様々な制度があります。まずは小規模宅地等の特例です。これは、住んでいた自宅などは、相続税評価額を最大で80パーセント減らせるという制度です。土地は路線価方式という方法で計算されるのですが、例えば土地の価格が1億円でも、自宅があった土地ならば、8割引の2000万円として評価され、2000万円だけが課税対象となる制度です。これは、「小規模」という名の通り、300平方メートルの土地までしか認められていませんが、大きな土地に変えることは、節税としてとても有意義であるといえます。

なお、この制度は、配偶者または同居親族しか使うことができません。また、住民票を一緒にしておくだけではなく、実際に同居していることが必要です。
では、別居している家族は使えないのか、というとそうではありません。平成30年の相続法改正により、いわゆる「家なき子特例」ができました。これは、別居家族であっても、3年以上自分の持家に住んでいない親族が相続した場合も、この小規模宅地の特例を使うことができるようになる制度です。
例えば、シングルマザーである母親と暮らしていたが、大学卒業後実家を出て、賃貸アパートに1人暮らしをしている息子、というような場合は、これまでであったら同居要件をみたさないのでこの特例を使うことはできませんでしたが、改正後は、小規模宅地の特例を利用することができます。
他にも、タワーマンションなどを購入することで不動産評価額を減らすことや、またアパート経営などされている方は生前にそれを子に譲っておくことで、財産がどんどん増えてしまうのを防ぐことができます。
注意していただきたいのは、不動産投資はとてもリスクが大きいということです。つまり、不動産は現金と違ってその価値が情勢によって変化します。例えば1億円で買った土地が暴落して7000万円になってしまう、ということもありえ、この場合はかえって損になってしまいます。大変リスクが大きく、税の特例制度を利用できるかどうかも人によって異なるため、専門家に相談し慎重に行うことをおすすめします。

●養子縁組制度の利用

養子縁組をして法定相続人が増やすことによる節税効果を狙うことも考えられます。つまり、孫などを養子に取ることで子の数を増やすなどして、法定相続人を増やすことです。先ほどの通り、相続税は、法定相続人の数に応じた非課税枠があります。例えば法定相続人1人につきそれぞれの基礎控除額は600万円、や生命保険の非課税限度額は500万円が増額しますから、養子を1人増やすと、2制度の利用だけで最大1100万円、課税遺産総額を減らすことができます。
なお、相続税の計算に含められる養子の人数には制限があり、亡くなった養親に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで、養子が養親の配偶者の実子(または特別養子)である場合は人数に関係なく全て法定相続人の数に含まれます。また養子を代襲相続する養子の直系卑属も、人数に関係なく法定相続人の数に含まれます。単に節税のために養子縁組制度を利用する場合は、1〜2人までしか増やせないという点を押さえておきましょう。
(参考:国税庁|No.4170 相続人の中に養子がいるとき)

なお、養子縁組の制度も、気軽に利用してしまうのはおすすめしません。まず、実の孫を養子にする場合は、相続税を2割加算で支払う必要があります。これは、通常、祖父母→父母→子、というように財産は流れるため、相続税を徴収するタイミングが2回あるのに、孫を養子にすることでそのタイミングが1回失われてしまうため、2割加算となっているのです。2割加算だとしても養子縁組制度を利用したほうがいいのか、やめたほうがいいかは場合によって異なるため、専門家に相談することをおすすめします。
また、孫の名字や血縁関係が変わってしまうことの重さや、法定相続人が増えることで遺産分割協議でもめてしまうリスクも考慮すべきです。

■まとめ

このように、相続税の対策の手段はいくつもあります。しかし、その判断は相続税の計算も必要ですし、また判断が難しい場合も多いです。税務署のチェックも大変厳しいため、相続税逃れとしか認められないようなものは、その制度を利用できない場合もあります。損をしてしまわないためにも、専門家の助言のもと適切な方法をとることが大切といえます。

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