約40年ぶりの相続法改正。何が変わったのか?変わったもの一覧を公開!

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約40年ぶりの相続法改正。何が変わったのか?変わったもの一覧を公開!

2018年7月6日に、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)が成立し、同月13日に公布されました。
この一連の相続に関する法改正のことを相続法改正と呼びます。
今回の相続法改正は40年ぶりに行われたものです。
この記事では、相続法改正で何が変わったのかを確認してみましょう。

■相続法改正で変わったもの一覧

今回の相続法改正では様々なものが変更されました。
変更されたものの例は、

・自筆証書遺言の方式の緩和
・遺産分割前の預貯金の払戻し
・配偶者居住権の新設
・法務局による遺言補完制度の創設
・遺留分制度の見直し
・相続の効力等に関する見直し
・相続人以外による特別の寄与

■自筆証書遺言の方式が緩和されます

今回の相続法改正によって、自筆証書遺言の方式が緩和されます。
改正がされるまで、自筆証書遺言の全てを自分で手書きすることが求められていました。
改正により、自筆証書遺言のうち、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、
パソコンやワープロなどで目録を作成することが可能になりました。

自分の財産の全てを把握して、その一覽を手書きで作成する作業は、年配の方でなくても大変です。
これを自書しなくてすむことにより、遺言書作成の負担が軽減されることになりました。

■遺産分割前の預貯金の払戻し制度が発足します

改正がされるまで、被相続人(亡くなった方)名義の預金口座は、相続人が複数いる場合、遺産分割が完了するまで、口座から現金を引き出すことができませんでした。
生活費を被相続人の口座で管理していた場合、遺産分割が終わるまでの生活資金が枯渇してしまい、生活が困窮してしまう案件が生じていました。

改正によって、遺産分割が完了する前に、預貯金口座から被相続人の現金を払い戻すことができるようになります(民法909条の2)。

■配偶者居住権が新設されました

改正によって、配偶者居住権という権利が創設されました(民法1028条)。
配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者が、被相続人が所有していた建物に移住していた場合、
その居住していた建物全部について無償で住み続けることができる権利のことをいいます。

改正がされるまでは、自宅を相続した相続人が、他の相続人にその分の相続財産を分配する必要が生じていました。
その結果、生活費分の相続ができず、生活が困窮してしまうケースなどが発生していました。
配偶者居住権が新設されたことにより、このような不都合を解消できる、より柔軟な遺産分割が可能になりました。

具体例を見てみましょう。
例えば、父と母と子の3人家族の場合を考えます。
お父さんがなくなりましたが、お父さんの持っていた財産(遺産)は、評価額10,000,000円の一軒家と、10,000,000円の現金であったとします。
母と子の相続分はそれぞれ2分の1ずつです。

相続法を改正するまでは、配偶者居住権と言う権利は存在していなかったため、お母さんが今までの一軒家に住み続けるために一軒家の所有権を相続した場合、残り半分の遺産である現金は、すべて子に相続することとなり、母は現金を相続できなくなり、生活資金に困窮してしまう可能性があります。

今回の改正相続法によって、お母さんは配偶者居住権、息子は配偶者居住権の負担のある所有権を相続することを選択することができます。
例えば今回の配偶者居住権が5,000,000円である場合、息子は5,000,000円の現金と配偶者居住権、お母さんは5,000,000円の現金をも相続することができます。
これによって、お母さんは一定の現金を確保することができ、従来の生活を続けることが可能です。

■相続人以外による特別の寄与の請求が可能になります

今回の相続改正法によって、相続人でない人でも、病気の被相続人(亡くなった方)を介護していた等の事情がある場合、その貢献に対して、遺産から報酬を支払うことが可能になります(民法1050条)。

■法務局による自筆証書遺言の保管サービスがスタートします

相続法改正によって、法務局における遺言書の保管等に関する法律が新たに成立しました。
改正がされるまでは、自筆証書遺言を保管してくれる公的機関は存在しませんでした。
そのため、自宅に置いておくか、信頼できる人に保管を依頼する必要がありました。
万が一、悪意のある人によって遺言書が改変される、燃やされるなどしてしまった場合、
遺言書が無効になってしまいます。

このトラブルが発覚した時点で、既に遺言を書いた人は亡くなっており、取り返しがつかなくなってしまうケースが多く発生していました。

改正により、自筆証書遺言(民法968条)を法務局が保管してくれるサービスがスタートします。
これにより、遺言者は、遺言書を紛失するリスクや、偽造隠匿されるリスクなく遺言書を保管してもらうことができます。

■施行期日はいつ?

法律には内容を周知する「公布」と、実際に効力を持つ「施行」があります。
相続に関する改正法が施行される日は、以下の通りです。

自筆証書遺言の方式を緩和する方策:2019年1月13日
原則的な施行期日:2019年7月1日
(遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し、特別の寄与等の⑴・ ⑶以外の規定)
配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等:2020年4月1日
自筆証書遺言の保管制度:2020年7月10日

今回の相続法改正により、様々な点が既に変更されています。
今回の改正では、遺言の作成の簡易化や配偶者居住権の新設など、様々な点が便利になった改正であると言えるでしょう。

これから相続対策や遺言の作成を考えている人は、今回の改正を踏まえておこないましょう。
疑問点等があれば、弁護士などの専門家にも相談しましょう。

相続・事業承継コラム