相続放棄とは何?相続放棄の概要とそのメリット・デメリットについて解説します!

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相続放棄とは何?相続放棄の概要とそのメリット・デメリットについて解説します!

相続における重要な制度として、「相続放棄」があります。相続放棄とは、文字通り、相続することを放棄することを意味し、どういうものかなんとなくわかるかと思います。しかし、法的効果のある相続放棄について詳しく理解している方は少ないと見受けられ、重要な制度だからこそ、しっかり理解しておく必要があります。

そこで、今回は相続放棄について詳しく解説していきます。

相続放棄とは

相続放棄とは何か

「相続放棄」とは、相続できる権利のある者が、その権利を自ら放棄して相続人にならないとすることをいいます。

相続による財産上の権利と義務の承継は、相続人(財産を受け継ぐ人)の意思に関係なく当然に生じます。
しかし例えば、被相続人(亡くなった人)に多額の借金があった場合、当然にその借金を相続人が引き継ぐとなると、その相続人の意思に反して大きな責任を負わされます。このような不利益を回避するため、相続放棄が認められています。

また、事業承継を円滑に進めようと家業を継ぐ者に財産を集中させる場合や、親族間の遺産争いに巻き込まれたくない場合、苦労してきた兄弟姉妹に少しでも多くの財産を渡したい場合など、さまざまな事情から相続放棄を選択することがあるでしょう。このように相続人には自分自身で相続するかどうかを選択することができるのです。

注意すべきなのが、一部の財産のみを相続放棄することはできないということです。相続の対象となる財産は、一部を除き、土地や預金などのプラスの財産に限らず、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます(民法896条参照)。条件付きで相続できる場合もありますが(限定承認。民法922条以下参照)、基本的にはすべての財産を相続するか、すべての財産を手放すかのいずれかしかできません。そのため、マイナスの財産だけを相続放棄することはできません。

●相続放棄ができる期間

このように相続人には相続するかどうかの選択権が認められていますが、いつでも相続放棄ができるというわけではありません。

相続放棄は、「相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行わなければなりません(民法915条1項本文)。この期間を「熟慮期間」といい、原則としてこの期間を超えて相続放棄を行うことはできません。例外的に、利害関係人または検察官の請求によってこの熟慮期間を伸長することもできますが(同行ただし書き)、伸長が必要な特段の事情が必要となります。

●相続放棄の撤回又は取消し

相続放棄を一度してしまうと、たとえ熟慮期間内でも撤回することはできません(民法919条1項)。このため、安易に相続放棄をしないよう注意する必要があります。

ただし、相続放棄に取消しができる原因がある場合は、その要件を満たす限り取り消すことができます(同条2項)。例えば、未成年者が親権者等の同意を得ないで相続放棄をした場合(民法5条)や、成年被後見人が相続放棄をした場合(民法9条)、錯誤によって相続放棄をした場合(95条1項)、詐欺・強迫によって相続放棄をした場合(96条1項)などでは、相続放棄をした意思表示を取り消すことができます。

取り消す場合は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法919条2項、4項)。取消しができる期間制限があり、追認することができるときから6か月間取消を主張しない場合は、時効によって消滅します(同条3条前段)。相続放棄の時から10年を経過したときも同様です(同項後段)。

●相続放棄の効果

相続放棄は単独で行うことができます。そして、相続放棄をしたときは、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。

ただし、相続放棄をしても、例えば、相続財産を管理しているような場合では、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を続けなければなりません(民法940条1項)。この場合、委任と同様、報告義務や費用償還請求権などが生じます(同条2項、645条等参照)。

●相続放棄をしてももらえる財産

これまで解説してきたように、相続放棄をすれば初めから相続人とならなかったものとみなされ、相続財産の一切を引き継ぐことはできません。

ただし、以下の財産については、もともと相続財産とされないため、引き継ぐことができます。
・形見分けの品
・死亡退職金
・仏壇やお墓などの祭祀財産
・遺族年金
・生命保険金(受取人が被相続人以外の場合に限る)

■相続放棄の手続き

相続放棄をしようとする場合は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法938条)。自分では相続放棄したと考えていても、所定の手続きを踏んでいないために相続放棄をしたとみなされないことがよくあります。他の相続人に相続放棄をした旨の宣言をした場合でも、それによって法的効果は生じません。

相続放棄を行う場合は、次の点を押さえましょう。

●申述人

申述できるのは相続人です。相続人が未成年者または成年被後見人(以下、「未成年者等」とする)である場合、その法定代理人が代理して申述します。

未成年者と法定代理人が共に相続人の場合に、未成年者等のみが申述をするときは、未成年者等について特別代理人の選任が必要です(826条1項、860条。最判昭和53年2月24日参照)。ただし、法定代理人がすでに相続放棄をしている場合や、法定代理人と未成年者等が同時に相続放棄をする場合には、特別代理人の選任は不要とされています(前掲昭和53年判決)。

また未成年者等が複数いる場合で、法定代理人が一部の未成年者等を代理して申述するときは、その未成年者等について特別代理人の選任が必要となります。

特別代理人の選任は未成年者等の住所地の家庭裁判所に請求します。

●申述先

申述は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で行います(家事審判規則99条)。

●申述に必要な費用

申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手代が必要となります。

●申述期間

すでに繰り返し述べているように、相続放棄の申述は熟慮期間内(「相続の開始があったことを知った時から3か月以内」)に行う必要があります。

●必要書類

相続放棄の申述は、以下の書類が必要となります。ケースによってはこれ以外の資料の提出が必要となる場合があります。どのような書類が必要かは家庭裁判所に問い合わせてみましょう。

・相続放棄の申述書
・申述人の戸籍謄本
・被相続人の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(出征から死亡までのすべての戸籍謄本)、住民票の除票

申述書の記載例などは裁判所ホームページで確認することができます。

■まとめ

以上、相続放棄について詳しく見ていきました。繰り返しになりますが、相続放棄は家庭裁判所で所定の手続きをしなければなりません。他の相続人に相続放棄を主張しただけでは法的効果は生じないので注意しましょう。

相続・事業承継コラム