さまざまな相続税の節税方法を解説します!

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さまざまな相続税の節税方法を解説します!

相続税は、亡くなった時点での財産額に応じて課税されます。
したがって、相続税がかかる相続財産を小さくしておくことが、節税対策の基本となります。そして、生前に対策をしなければ、相続税がかかる財産を減らすことはできません。

以下では、様々な相続税の節税方法についてご説明いたします。

■毎年110万円以下の暦年贈与による生前贈与

生前に財産を贈与をしておけば、相続税がかかる財産の額を減らすことができますが、贈与には相続税よりも課税率の高い贈与税がかかります。
それでは節税効果が見込めないように思えますが、暦年贈与という贈与税の仕組みを利用することがポイントになります。

暦年贈与とは、受け取る人が1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えなかった場合、贈与税が発生しないという制度です。
すなわち、贈与した人数×110万円×贈与した年数分、無課税で贈与することができます。

この制度をうまく使えば、少しずつ相続財産を減らしながら、贈与税の課税も回避できるということになります。

ただし、相続発生前の3年間の贈与については、「生前贈与加算」といって、相続時の財産として相続税の対象となってしまうことには注意が必要です。

■生命保険の活用

遺族が受け取る生命保険金については、一定の非課税枠があるため、うまく利用すれば節税につながる場合があります。

受取人が相続人であれば、生命保険金は、500万円×法定相続人の数まで、相続税が課税されません。

■相続時精算課税制度

不動産にかかってくる相続税については、相続時精算課税制度を利用すれば、節税効果を見込める場合があります。

相続時精算課税制度とは、 60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子や孫に対して財産を贈与した場合に、受け取った額の合計2,500万円までは贈与税が非課税になる制度です。
相続発生時、すなわち贈与した人が亡くなったときに、相続時精算課税制度を使って贈与した財産を、相続財産の中に戻して計算しなければなりません。この制度は相続発生まで贈与税の納付を待ってもらう制度だといえます。

しかし、単に税金の支払いを先送りにするだけでなく、確実に値上がりが予想される不動産であれば、相続時精算課税制度を利用して節税対策を見込める場合があります。

というのも、相続時精算課税制度において相続税を算出する際の評価額は、贈与時の不動産の価値を基準とされます。相続発生時に贈与時よりも不動産が値上がりしていた場合、相続時の値上がりした価額よりも低い贈与時の価額を基準に相続税が課されるため、納める相続税の額は、制度を利用しない場合よりも少なくて済みます。

また、賃貸などで収益を生む不動産は、贈与せずに相続した場合、毎月得られる収入はそのまま相続財産の増加へとつながり、相続時には被相続人の得た収益分に対しても多額の相続税が課されてしまいます。
しかし、生前贈与を行えば、不動産から得た収入はそのまま生前贈与を受けた人の収入となるため、相続税を減額することが可能だといえます。

注意が必要なのは、相続時精算課税制度を一度でも利用すると、「暦年贈与」の非課税枠を二度と利用できなくなる点です。

■教育資金一括贈与特例

教育資金一括贈与特例とは、祖父母などから教育資金として金銭等の贈与があった場合、受贈者一人につき1,500万円までの金額に相当する部分については、金融機関等の営業所などを経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、贈与税が非課税になる制度のことをいいます。
本制度は、2013年4月1日から2021年3月31日までの間の贈与に適用されます。

教育資金とは、以下のようなものが対象となります。

一つには、学校教育法で定められた「学校等」に対して支払われる金銭があります。「学校等」とは、幼稚園や認定こども園または保育所等、小・中学校、高等学校、大学、大学院、外国の教育施設等が該当します。これらの教育施設へ支払う入学金や、授業料、施設設備費、検定料等の金銭が対象になります。

もう一つには、学校等以外に対して直接支払われる金銭のうち、教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものがあります。例えば、学習塾等の外部教育機関に支払う授業料や、スポーツ(水泳、野球など)、または文化芸術(ピアノ、絵画など)に関する活動、その他教養の向上のための活動に係る指導への対価や、これらに使用する物品の購入に要する金銭などが、教育資金の対象に含まれます。

■結婚・子育て資金の一括贈与

20歳から49歳までの子に対して、1,000万円までの結婚・出産・子育てに関するお金を渡した場合、そのお金に対しては贈与税が課税されません。
贈与契約を結んで結婚・子育て資金口座の開設を行った上で、該当口座に贈与金を保管します。すると、その口座からの結婚・子育て目的の支出はすべて非課税となります。

結婚子育て資金とは、以下のようなものが対象となります。

結婚に際して支払われる資金として、挙式費用、衣装代などの婚礼費用や、新居の家賃・敷金・引越し費用などがあります。
また、妊娠・出産および育児に要する資金として、不妊治療や妊婦検診に要する費用、分娩費、産後ケアなどに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育園の保育料などが挙げられます。

■配偶者控除

配偶者控除とは、被相続人の配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものが金額が、1億6000万円、もしくは配偶者の法定相続分相当額の、どちらか多い金額までであれば相続税がかからないという制度です。

ただし、その配偶者が亡くなったときに、配偶者が遺した財産に対しても相続税がかかります。子は二度の相続を経験するということで、これを二次相続の問題といいます。
配偶者控除に限ったことではありませんが、二次相続のことも考えて遺産分割をするのが望ましいといえます。

■配偶者居住権

配偶者居住権とは、2020年4月から新たに創設された制度であって、配偶者が相続発生前から住んでいた自宅について、所有権を相続しなかったとしても、引き続き居住する権利が保証される、という権利です。

自宅の不動産の権利が所有権だけではなく、所有権と居住権の2つの権利に分けて、それぞれを別の人が相続できることになります。

例えば、6000万円の財産を有する夫が亡くなって、妻と息子が相続した場合、妻も息子も譲らずに、ちょうど半々の3,000万円ずつを相続したとします。夫の財産は4,000万円の自宅と2,000万円の預金でした。
配偶者居住権の制度を使わなければ、妻が4,000万円の自宅を相続しようとした場合、息子に残りの1,000万円を相続させるために、自宅を売却しなければなりません。

しかし、妻に配偶者居住権が認められれば、相続する自宅について、居住権と所有権(居住する以外の権利)を別々の財産価値として評価して、分離させたそれぞれを、妻と息子に相続させることができます。
自宅の価値4,000万円のうち、妻は2,000万円の居住権を、息子は2,000万円の所有権を相続することになります。そして、相続財産の預金2,000万円も妻と息子に1,000万円ずつ相続されます。

すると、妻は自宅を売却しないで済む上に、生活資金としての1,000万円も手に入れることができます。

このような配偶者居住権がなぜ節税に繋がるかというと、配偶者が取得した配偶者居住権が、配偶者が亡くなることで自然に消滅することにポイントがあります。
この性質を利用して、配偶者に2,000万円の居住権を、子に2,000万円の所有権を相続しておけば、居住権の2,000万円は子に相続することなく消滅するので、2,000万円分の相続税がかからずに済むのです。

居住権を配偶者に相続させた場合に相続税がかかるからあまり意味がないのでは、と思われるかもしれませんが、配偶者の相続は配偶者控除という別の規定によって優遇されており、子に相続するよりも相続税が少なくて済みます。
さらに、配偶者居住権が設定された建物の敷地に関する権利については小規模宅地等の特例の適用が可能で、宅地の評価額を減額できるため、大幅な節税が可能になります。

■墓地や仏具を生前に購入する

墓地・墓石・仏壇・仏具には相続税が課税されません。
そのため、このような非課税資産の購入を生前に行うことが考えられます。
これらの購入に充てた分だけ遺産を減らすことにつながり、相続税の負担を減らすことができます。

生涯をかけて築いた財産は、できるだけ大事な家族のために遺してあげたいと思うものです。
相続税は、しっかりと対策をすれば確実な節税効果が見込めるため、早い段階から相続について考えてみることが重要になります。

相続・事業承継コラム